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税理士 奥 山 寛 樹

神奈川県横須賀市の会計事務所ブログ

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税制改正の隠れた目玉

 独立行政法人中小企業基盤整備機構の所管する中小企業倒産防止共済制度について今般税制改正の対象になっています。

■倒産防止共済制度
 中小企業倒産防止共済制度は、いつ起こるかもしれない「取引先の倒産」というような不測の事態に直面した中小企業に迅速に資金を貸し出しする共済制度です。
 毎月20万円以内の掛金を総額が800万円になるまで積み立てることができます。また加入者は、取引先が倒産した場合に、積み立て掛金総額の10倍の範囲内(最高8千万円まで)で回収困難な売掛債権等の額以内の貸し付けを受けることができます。

■どこが税制改正?
 今回の改正項目は、月額掛金と積立限度額が2.5倍に膨らんだことです。
 この共済掛金は全額損金(必要経費)になりますので、年間240万円の費用を数年に亘り創り出せることになりました。留意すべきは、損金(必要経費)になるこの掛金が掛け捨てでないことです。本来は積立金であり、掛け捨ての保険ではな
いにもかかわらず、毎月の掛金は、税法上損金(法人)または必要経費(個人)に算入できるのです。

■注意すべきこと
 解約は自由です。ただし無利息です。40ヶ月以上積み立てれば100%戻ります。40ヶ月以内の解約は損をします。倒産防止共済金を掛金の10倍まで利用しても無利息とはなっていますが、共済金の10分の1の掛金が没収となるので、全体で10%の利息となります。最長期間の5年で返済とすると年利4%に相当します。
積立金が無利息であることを考慮すると、高すぎる金利と言えます。純粋に節税商品として利用するのが最も有利な利用法といえます。

■税制上の留意点
 毎月掛金の損金(必要経費)算入は租税特別措置法に規定されていますが、損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない、とされています。法人税の場合は別表十(六)が用意されています。
 また、積立期間40ヶ月以上経過後の任意解約による積立金の全額返還は益金(収入金額)となるので、解約のタイミングも留意事項と言えます。
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非常勤役員の報酬はいくらまで認められるか


非常勤の親族役員への報酬は幾らぐらいが妥当なのかと言う質問に明確な回答はありませんが、平成17年にこの金額につき国税不服審判所の裁決が出ています。
 
■事案の概要
 代表取締役であるAさんは、設立以来母親を非常勤取締役としており、月額300万円(年収3,600万円)の報酬を計上し、損金の額に算入していたところ、税務署は、取締役としての職務は特に定まっていないことを理由として、月額約15万円のみを損金に算入すべきという処分を下しました。この月額約15万円というのは同種の企業の非常勤役員報酬の平均値です。
 これに対しAさんは、母親は事業の上でも自分の良き相談役であるので少なくとも他の従業員とおなじ月額50万円が相当だとして国税不服審判所に処分の取
り消しを訴えました。
 
■国税不服審判所の判断
 この訴えに対し国税不服審判所は税務署を支持し、月額約15万円のみを損金の額に算入するのが妥当であるとする判断を下しています。「良き相談役」というのはあくまで主観で客観性・具体性に欠けるものであり、何らの証拠書類もないことなどがその理由です。
 
■名目役員と租税回避
 推測ですがこの場合、実態は名目役員であったと思われます。また月額300万円の報酬は社会通念上も逸脱した金額であり、社長の所得を母親へ分散し、所得税の軽減を意図した行為であったのだと思われます。
 
■月額15万円を多いと見るか、少ないと見るかは考えようです。
 この裁決を「名義だけの親族役員にも、月額15万円は認めても良い」と解釈すると、親族役員の場合、儲かっていないときは只で仕事をし、仕事が順調になったので従業員をやとって今は特に仕事をしていない場合や、仕事はしていないが、借入れの担保としての土地を提供している場合や、きちんと役員会には出席し、会社の意思決定には参加している場合などがあります。様々なケースが想定されますから、月額15万円以上の報酬の支払いも充分可能です。

民主党政権で税制は?


第45回衆議院議員総選挙において、民主党が306議席を獲得し、新たに政権を担うこととなりました。
民主党は、マニフェストにおいて税制について公約を掲げていますので、いくつか見てみましょう


■年末調整選択制度の導入
 給与所得者についても確定申告を原則とし、年末調整も選択できる制度が導入されます。

■年金課税の見直し
 「公的年金等控除」は平成16年度改正以前の状態に戻され、廃止された「老年者控除」は復活します(ただし、所得制限あり)。

■住宅ローン減税
 バリアフリー化や省エネなどの社会ニーズの高い分野に対して重点的な負担軽減策が講じられるとともに、自らの資金で住宅を新改築・購入した場合でも、住宅ローン減税と同程度の負担軽減を受けることができる制度(投資減税)が創設されます。

■保険料控除
 生損保の保険料控除については、社会保障制度を補完する遺族・医療・介護・老後(年金)といった保険商品に対応した、新しい保険料控除制度を創設、所得控除限度額が所得税において15万円程度に引き上げられます。

■給付付き税額控除
 生活保護などの社会保障制度の見直しと合わせて、次の控除の導入が検討されます。 
  
(1)基礎控除に替わり「低所得者に対する生活支援を行う給付付き税額控除」

(2)消費税の逆進性緩和対策として、基礎的な消費支出にかかる消費税相当額を一律に税額控除し、控除しきれない部分については給付をする「給付付き消費税額控除」

(3)就労への動機付けのため、就労時間の伸びに合わせて「給付付き税額控除」の額を増額させ、就労による収入以上に実収入が大きく伸びる形で「就労を促進する給付付き税額控除」

これとともに、配偶者控除などの諸控除が見直され、また、税と社会保障に共通の番号制度の導入が前提とされます。

■法人税
 中小企業に係る法人税の軽減税率は、現行の18%から11%とされます。「一人オーナー会社(特殊支配同族会社)」の役員給与に対する損金不算入措置は廃止されます。
 

エコカー減税

■即効性ある減税策
 政策減税の目玉の一つの住宅ローン減税の目玉部分が後ろ倒しなのに比し、自動車をめぐる政策減税の目玉部分は1回限りの減税なので、前倒しそのもので、即効性がありそうです。

■自動車税制の減税策の趣旨
 最近の厳しい経済状況の中で自動車の販売台数が急速に落ち込んでおり、景気対策の観点から、自動車の購入や買換えを促すような施策であるとともに、排出ガス及び燃費性能に優れた環境にやさしい自動車の普及と技術開発促進を促すことにより環境技術立国も視野に入れているものです。

■減税策の概要
 景気対策と環境対策とを両立させるものとして、本年4月1日より3年間、(1)国税である自動車重量税についてはこの3年間のうちに初めて受ける車検時に、(2)都道府県税である自動車取得税については新車取得時に、それぞれ環境性能に優れた自動車に対して税の減免をします。乗用車について大雑把にいうと、次世代自動車は免税、排気ガスがきれいでガソリン消費量が少ない(=二酸化炭素排出量が少ない)乗用車は75%又は50%の税額軽減が行われます。

■クルマ選びの参考に
 車両価格200万円、車体重量1.3トンの環境性能に優良な新車の購入の場合を例にとって試算してみます。
(1)電気自動車、一定条件を満たすハイブリッド自動車・天然ガス自動車、クリーンディーゼル車等(いわゆる次世代自動車) ⇒ 本来の税額をすべて免除納税額は0円で、一般の自動車に比べ14万6700円の減税となります。
(2)平成17年排出ガス基準比75%低減を達成し(いわゆる☆☆☆☆認定車)、平成22年度燃費基準を25%超過達成している乗用車 ⇒ 本来の税額の75%を軽減、納税額は3万6600円で、一般の自動車に比べ11万100円の減税となります。
(3)平成17年排出ガス基準比75%低減を達成し(いわゆる☆☆☆☆認定車)、平成22年度燃費基準を15%超過達成している乗用車 ⇒ 本来の税額の50%を軽減納税額は7万3300円で、一般の自動車に比べ7万3400円の減税となります。

平成20年の所得税申告 申告納税額が5年ぶりに減少

国税庁が「平成20年分の所得税、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」を公開しました。
 それによると、平成20年分の所得税確定申告書を提出した人は10年連続で過去最高を更新したものの、申告納税額は5年ぶりに減少したことが明らかになっています。

 平成20年分の所得税確定申告書を提出した人は前年より0.3%多い2369万3千人で、10年連続での過去最高となりました。しかし、そのうち申告納税額があった人752万3千人(前年比3.2%減少)、および、その所得金額39兆5940億円(同8.5%減少)がいずれも減少し、その結果、申告納税額は前年より11.6%も少ない2兆6495億円となりました。申告納税額が減少したのは5年ぶりです。一方で還付申告者数は、1283万6千人(同1.1%増加)と4年連続で過去最高を更新しています。

 これを所得区分別の状況で見ると、事業所得者が納税人員165万8千人(同7.7%減少)、所得金額6兆4587億円(同7.6%減少)、申告納税額5282億円(同6.5%減少)、その他の所得者も納税人員586万5千人(同1.8%減少)、所得金額33兆1353億円(同8.7%減少)、申告納税額2兆1213億円(同12.9%減少)といずれも低調でした。

 なお、e-TAXや国税庁ホームページの確定申告コーナーなど、ITを利用して平成20年分の所得税確定申告書を提出した人は807万7千人でした。同申告書提出者全体(2369万3千人)の3分の1強(34.1%)がITを利用して確定申告書を提出したことになります。
 その内訳は自宅からe-TAXや確定申告コーナーを利用した人が426万9千人(18.0%)、税務署備え付けのパソコンを利用してe-TAX、または申告書印刷をした人が380万8千人(16.1%)でした。